責務の整理に用いるRACI図と現実を踏まえたメンテナンス
こんにちわ。従業員体験( EX ) の向上がミッションのエンジニアリング統括室に所属しているてぃーびーです。
誰が何の責務を持っているのか、明確になっているでしょうか?
責務が曖昧だとこぼれ球が発生したり、本来担当ではないはずのものを担当してしまったりすることで結果として仕事の質や効率が損なわれやすくなります。場合によっては責任に関わる関係者感の関係性の悪化にも繋がりかねません。
そこで、まず責務整理の定番であるRACI図について紹介します。
次に、RACI図には派生が存在するためいくつかの派生を紹介します。
最後に、責務整理の現実を考えた場合のメンテナンスについて考えます。
RACI図とは?
RACI図は役割分担を明確にし、可視化するための図です。
RACIは
- Responsible - 実行責任者
- Accountable - 説明責任者
- Consulted - 協業先
- Informed - 報告先
の頭文字から命名されています。
Accountable は日本語だと馴染みがない方もいると思いますが、対象となるタスクや成果に対する責任を持つ人です。
その特性から、任意の取り組みに対して1人のみが責任を持ちます。
RACI図の例
採用業務に関する RACI のサンプルです。こんな責務分担のケースがありそう、と想像して作ったものです。
クラスメソッドの実態とは全く関係ありません。
- 全社の人員計画
- 全社の人員計画は経営陣が説明責任を持ち、人事マネージャーとともに実行していく
- 各部の人員計画
- 各部の人員計画は各部の採用責任者が責任を持ち、経営・人事マネージャーに情報連携をする
- 採用活動
- ソーシング
- 採用広報、スカウトなど候補者さんを集める部分は採用リーダーが説明責任を持ち、リーダーとメンバーと採用責任者で実行していく。人事部マネージャーには情報連携しつつ、必要に応じて専門家に相談する
- カルチャーマッチの選考
- 全社のカルチャーマッチは採用リーダーが説明責任を持ち、採用メンバーと採用責任者が実施する。人事部マネージャーには情報連携しつつ、必要に応じて専門家に相談する
- スキルマッチの選考
- 個別のスキル選考は採用チームは介入せず各部に委ねる。採用責任者が説明責任を持ち実施する。必要に応じて専門家に相談する
- クロージング
- 内定オファーのクロージングは採用責任者が説明責任を持ち実施する。必要に応じて人事マネージャーや採用リーダーに相談する
- アシスタント業務
- アシスタント業務は採用リーダーが説明責任を持ち、採用メンバーが実施する。必要に応じて人事マネージャーや採用責任者に情報連携する
- ソーシング
RACI図の派生
RACI図には様々な派生があります。細かなところは後述のリンク先を参照してもらうとして、派生版ではR/A/C/Iの他に以下のような要素が登場します。
- Control - 管理者 - 対象のレビューをする。拒否権を持つ人。その助言は拘束力を持つ
- Suggest - 提案者 - 助言をしてくれる相談先。その助言は拘束力を持たない
- Support - 支援者 - タスクを手伝ってくれる支援先
実際の派生に関する詳細はこちらを参照ください。
現実を踏まえたメンテナンス
守備範囲に対する柔軟性を失わない
一度責務を整理しても、それが永続するわけではありません。
- できることが増えていったら責務を広げていくことも可能
- 誰も担当していない仕事があれば、責務としてまとめる対象を追加する
- すでに不要になった仕事があれば、責務から除外する
など、状況に合わせたメンテナンスが必要です。
権限委譲はグラデーション
なにかの責務を持つ場合、実際には「持つ・持たない」のゼロイチではなく、段階があります。
そのあたりの段階を扱う方法として、マネジメント3.0の手法としてデリゲーションボード、デリゲーションポーカーがあります。
責務を委譲する場合、ゼロイチではなく、デリゲーションボードで扱うような段階を経つつ委譲していくとよいでしょう。
まとめ
責務の整理に用いるRACI図と現実を踏まえた運用についてまとめました。
責務を整理すると、自分の業務を狭く捉えすぎて、それしかしない人が増えるのではないか、などの懸念があるかもしれません。
一方で、責務を明確にすることは、それぞれの担当に対してコミットしていく対象が明確になり、相談したり、協力を得たりする先も明確になります。関わる人が多すぎたり、責務の所在が曖昧だとその確認だけで時間を取られたり、お互いに対する暗黙の期待が発生し、そこから関係性の悪化へのきっかけにもなりかねません。余計なことで消耗しない意味でも、責務を明確にしていく恩恵があります。